シガだねレポート|食の力で滋賀県をブランディングするプロジェクト『シガだね』

シガだね
レポート

CATEGORY | nadeshico

細川雄也、「シガだね」始動への思いを語る。

2020.10.22

writer | しがトコ編集部

細川雄也、「シガだね」始動への思いを語る。

ついに、「シガだね」始動!
って言っても、そもそもシガだねってなに?
お店?メディア?
どんな人がやってるの?

そんなみなさんの疑問にお答えするために
シガだねを始めた人、
株式会社nadeshico 代表取締役の細川雄也さんに
熱い思いを聞いてきました!

「シガだね」ってなに?

細川

ひとことで言うと「食の力で滋賀県をブランディングしよう!」
っていうプロジェクトです。
これ実は、僕が昔からやりたかったことで。
そもそも僕、nadeshicoを始める前は農協の職員だったんですよ。

そうなんですか!

細川

当時、農家さんからいつも言われていたのは
「こうやって出荷しても高くは買ってもらえない」ということ。
農協で働くうちに滋賀の野菜のおいしさを実感するようになったし、
ひとつの野菜がどれだけ手をかけて作られているかも知りました。
だからこちらもそれに見合った価格で買いたいけど、
一従業員の立場ではそれができなかった。

細川

それが僕の中でずっとジレンマでした。
だったら独立して自分で事業を始めて、農家さんから仕入れた野菜を
おいしく加工して販売したらいいじゃないか、
みんながウィンウィンの関係になれるんじゃないか。
そう思って始めたのがnadeshicoです。

そんな思いがあったんですね。

細川

でも、いざやってみると難しいこともあって。
野菜には旬があるので、お店としても旬のものを料理にして提供したい。
でも、農家さんが出す野菜の量って変動するんです。

細川

昨日はたくさんとれたけど、今日は雨で収穫ができなかったとか。
そもそも今年は出来が良くないとか、台風にやられちゃって…とか、
そんなことはいくらでもあります。
僕らはやっぱり安定した量がほしいので、
そういう面で農家さんと上手にマッチングして続けていけなかった。

農家さんだけに頼ってしまうと、それがこちらのリスクになる?

細川

そう。そういう難しいところも、実際にやってみてわかりました。
だからこの仕組みをさらに進化させるためには、
新しい販路を作って、農家さんの野菜を
ちゃんと使える場を確保しようと思ったんです。

店舗じゃない、新しい販売の形…

細川

生産者それぞれのストーリーを紹介して、その人をしっかりPRしながら
生産の現場から加工、販売までをひとつにつなぐ。
そうやってずっと構想を温めてきたものが
今回の「シガだね」のベースになっています。

東京で打ちのめされて、気づいたこと

滋賀県に対してはどんな思いがありますか?

細川

4年前に、東京にお店を出したんです。
TABLE O TROIS(ターブル オー トロワ)っていう、
近江牛やバームクーヘン豚など滋賀の食材を本格フレンチで
楽しんでもらえるビストロです。

正直、そのお店を出すまでは滋賀へのこだわりってそんなに意識してなかった。
もちろん自分の地元だし、滋賀県を良くしたいという思いは常にありましたけど。
その思いが確信に変わったのは、初めて東京に出店した時でした。

2016年に渋谷でオープンしたTABLE O TROIS

それは、どんな風に?

細川

滋賀県にいる鮎の生産者さんと、米の農家さんと組んで出店したんです。
他にも近江牛とかバームクーヘン豚とか、
滋賀の食材をたくさん使っているし、東京のお客さんにウケるだろう!
と思って始めたけど…やっぱりね、
ハードルはめちゃくちゃ高いです。もう、大変。

滋賀のものを売って、東京のお客さんに「滋賀っていいね」
と思わせるのがものすごく難しかった。
だいたいの人は、「え?滋賀?」って反応です。

滋賀の知名度が低いからでしょうか?

細川

うん。「滋賀といえばコレ」というイメージがないんですよね。
あっても食べものじゃなく、「琵琶湖でしょ?」ぐらい。

そこから琵琶湖の魚にはつながらない。

細川

つながらない。もう、東京の洗礼を真っ正面から食らいました。
で、これじゃいかんと。

それぐらい、東京の人には“滋賀”が響かなかった。

細川

響かなかった。
なぜって、東京にはそんな店が山ほどあるからです。

確かに、郷土料理のお店はたくさんありそうですね。

細川

もうね、各地のおいしいものが全部東京に集まってきてる。
ちょっと滋賀とか言ったくらいじゃ、全然引っかからないわけです。
あぁ、全然ダメだな…と思った時に気づいたのが、
外に広げるよりも先に、自分達で内側を固めるのが大事なんだな、
ということでした。

内側って、つまり滋賀県内ということでしょうか?

細川

うん。自分達で滋賀のことをもっと考えて、
中身のクオリティーを上げていく必要がある。
それまで僕は地産地消が大事だと思ってきたけど、
これをきっかけに、地産“他”消も大事だなと思うようになりました。

それが、滋賀ブランディングを始めるきっかけになったんですね。

細川

そうです。この時から、
「僕らは滋賀県を大事にしながら、飲食をやっていくんだ」
という考えにシフトチェンジしました。
だから滋賀県以外には、もう店は出しません。

なるほど!そこからnadeshicoはどう変わったのでしょう?

細川

スタッフはみんな、「滋賀を代表する企業になる」
という思いを持ってくれています。

シフトチェンジした時、言ったんです。
「飲食業界の平和堂になろう!」って。
老若男女、滋賀県民はみんな平和堂を知ってるし、
ホップカード(平和堂のポイントカード)もひとり1枚持ってる。

確かに、滋賀県民に愛されるスーパーですもんね。

細川

やっぱり「滋賀のスーパーと言えば平和堂」
っていう絶対的な強さがある。
だから僕らも「滋賀で外食するならnadeshico」と
言われるような企業になろうと。
そのためにはやっぱり滋賀の食材を使う、滋賀の人達を思う、
滋賀を良くするために動く、これが僕らの使命だと思っています。

あの日の「ありがとう!」が忘れられない

nadeshicoが大切にしている“食のシーン”というキーワードについても
聞かせてください。

細川

当然、僕自身も食べるのは大好きです(笑)
「飲食店は街をイロドル」は常に言ってきたことですが、
これは石山グリルをオープンした時に、
お客さんからかけられた言葉がもとになっていて。

細川

もう5年前になるのかな。
石山グリルがオープンして間もない頃、店に顔を出したら
お客さんに肩をたたかれて。
「社長さんですか?」って言うから
スタッフが粗相でもしたのかと思ってお話を聞いたら、
僕の手を強く握って
「この石山の街に、こんな素敵なお店を作ってくれてありがとう!
おかげで食事をする楽しみと、お酒を楽しむ場所がまた増えたよ!」
って言われたんです。もう、その言葉が無性に嬉しくて。

それはグッときますね!

細川

この時のことが、ずっと心に残っていて。
そうか、僕らはただ自分達が儲けようと思って
飲食店をやってるんじゃないんだと。
僕らが楽しく賑やかにお店をやることで、地域の人達が喜んでくれる。
僕らの仕事は街づくりなんだな、と思ったんです。

細川

だから、新店舗を出す時は常にその街にないものを作ります。
地域の人が求めているもの、
あったら喜んでくれるものを考えてお店にする。
そこで使う食材は、もちろん滋賀県産のものです。
生産者に良く、食べる人に良く、街が元気になる。
それが結局、近江商人が大切にした“三方よし”にも
つながるんですよね。

滋賀の“たね”をみんなで育てたい

シガだねはどんなプロジェクトにしたいですか?

細川

滋賀の人に愛されるプロジェクトにしたいです。
みんなで作っていくものなので、
滋賀の人は“お客さん”というより、“仲間”だと思ってます。

自分達の地元にはこんないいものがあるんだよ、
ってことに気づいてほしいし、
滋賀県の人にこそ、滋賀のいいところが
もっと伝わっていけばいいなと思います。

これからが楽しみですね!

細川

今、第一弾として酒粕チーズケーキを開発中ですが、
同時に次のたね候補がどんどん出てきています。

どんな“たね”を募集していきたいですか?

細川

滋賀県産の野菜や米はもちろん、琵琶湖の魚や、肉なども工夫して、
これまでにない商品に変えてきたいと思っています。
もちろん一般の方からの「こんな“たね”あるよ!」という声も大歓迎。

細川

小さいたねがどんどん集まってきて、
滋賀県のみんなでおいしい商品という花を咲かせて、
それが全国に広がって。
シガだねプロジェクトを通じて、
滋賀がどんどん魅力的になっていくといいなと思います!

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細川雄也、「シガだね」始動への思いを語る。

2020.10.22 writer | しがトコ編集部